「牛ほめ」は、古典落語の演目のひとつで、与太郎(よたろう)という、間の抜けたキャラクターが出てくるお話です。
シンプルな内容なので、落語初心者の方にもおすすめの滑稽噺(こっけいばなし)です。
この記事では、落語「牛ほめ」のあらすじや登場人物を紹介しています。
落語「牛ほめ」とは
「牛ほめ」は、古典落語の演目一つです。
この物語は、主人公の与太郎が、父親から叔父のおじ祝いに行くように言われ、おじの新築祝いに行くというお話です。
与太郎は、父親から家の褒め方を教えてもらうのですが、上手く褒めることができないというところが、笑いどころのひとつです。
ちなみに、原話は、1687年に出版された笑話本・『はなし大全』の一遍である「火除けの札」です。
登場人物
それでは、落語「牛ほめ」の登場人物を紹介していきます。
与太郎
このお話の主人公の与太郎(よたろう)。
間が抜けた人物で、世間でもバカ扱いされています。
父から、おじの新築祝いに行くように言われ、叔父の家に向かいます。
与太郎の父
世間で馬鹿にされている与太郎のことを心配している父親。
叔父にも馬鹿にされていることを不憫に思い、おじの新築の家を与太郎が上手く褒めれば、見直してもらえると考え、与太郎をおじの家に向かわせます。
与太郎のおじさん(左兵衛)
与太郎のおじさんの左兵衛。
与太郎のことを馬鹿にしています。
「牛ほめ」のあらすじ
それでは、落語「牛ほめ」のあらすじを紹介します。
父が与太郎に、おじさんの新築祝いに行くよう提案する
とあるところに与太郎という男がいたのですが、世間では馬鹿だと言われており、そんな息子を父親は心配しています。
社会性を身につけようと思ったのか、父は与太郎に、新しく家を建てた左兵衛おじさんの家に行かせようと考えます。
そこで与太郎が、新築祝いの口上をしっかりと言うことができれば、おじさんからも見直してもらえると考えたからです。
与太郎。
左兵衛おじさんのところに行って、家を褒めてきなさい。
父が与太郎に褒め言葉を教える
おじさんのところに行くの?
なんて言えばいいの?
うむ。
家に着いたら、こう褒めるんだ。
そう言って、次のような褒め言葉を与太郎に教えます。
家は総体檜づくり(そうたいひのきづくり)、
天井は、薩摩の鶉木目(うずらもくめ)、
左右の壁は砂ずり、
畳は備後の五分縁(ごぶべり)、
庭は総体御影石造り(そうたいみかげいしづくり)でございますな。
このように、父は、褒め言葉を教えますが、与太郎はなかなか覚えることができません。
そこは、褒め言葉を紙に書いて渡すことにして、もうひとつ与太郎にアドバイスを与えます。
先日、左兵衞おじさんのところに家に行ったら、台所の柱に節穴があったんだ。
そこで、上手く褒めることができたら、小遣いがもらえるだろうよ。
お小遣いがもらえるの!?
どうやって褒めたらいいの!?
うむ。次のように褒めるんだ。
「この穴には、秋葉様のお札をお張りになってはいかがでしょうか?
穴が隠れて火の用心になります。」とな。
お小遣いもらえるから、これは覚えた!
まったく…。
あ!あと、飼っている牛をほめるのもいいかもな。
わかったー。
行ってきまーす。
このような流れで、与太郎は、左兵衛おじさんの家へと向かいます。
ちなみに、台所の節穴に「秋葉様のお札」を貼ることを提案するように父から与太郎に伝えていますが、秋葉様のお札とは、防火の神様である秋葉大権現(あきばだいごんげん)のお札のことです。
与太郎が左兵衞おじさんの家に到着する
ごめんなさーい。
許してくださーい。
家に着いたら、「ごめんなさい」じゃなくて、「ごめんください」だろ?
馬鹿だねーお前は。
何しにきたんだい?
おじさんの家を褒めに来たんだよ!
ん…?あれ…?なんて褒めればいいんだっけ?
あっ…!そうそう。
与太郎は、父にもらったカンニングペーパーを読みながら、なんとか新築祝いの口上を読み上げることに成功します。
難しい言葉をよく覚えたなー。
少し、見直したぞ。
台所に向かう二人
与太郎は、父に言われたように台所に向かいます。
あっ、台所を見せてよ!
台所?
いいぞ。こっちだ。
そうして、二人は、台所に到着します。
あ!おじさん!
あの柱に節穴があるよ!
そうなんだよー。
大工が間違えてそんなところに節穴持ってきちまってなー。
どうしようか困ってんだよー。
心配いりません!
この穴には、秋葉様のお札を貼ってはいかがでしょうか?
穴が隠れて火の用心になります。
お!
名案じゃねぇか!
これはびっくりした!
ほれ、小遣いをやろう。
秋葉様のお札を節穴に貼ることを提案したことで、与太郎は、お小遣いをもらうことができました。
父に言われたように牛も褒めようとする与太郎
お小遣いを貰い、調子に乗っている与太郎。
自宅で父に言われたように、おじが飼っている牛も褒めようとします。
おじさん!
牛を見せておくれよ!
牛?
いいぞ。
これは、総体檜造り、天井は薩摩の鶉木目…、
まったく…。
それは、家に使う褒め言葉じゃねぇか。
そうこうしていると、目の前にいる牛がフンをしてしまいます。
あ!
フンをした!
まぁ、生き物だから、仕方ねぇな。
おじさん!
この穴には、秋葉様のお札を貼ってはいかがでしょうか?
牛のケツの穴に秋葉様のお札を貼れってか!?
はい。
穴が隠れて屁の用心になります。
与太郎のこの一言がオチとなり、このお話は終わります。
このオチは、「火の用心」と「屁の用心」という言葉と、「節穴(ふしあな)」と「牛穴(うしあな)」という2つの言葉がかかったオチとなっています。
まとめ
この記事では、落語「牛ほめ」のあらすじや登場人物などを紹介させていただきました。
牛ほめのこと以外にも、これから落語を楽しみたいという方向けに記事を作成していますので、参考にしてみてください。