美術館巡りは、筆者自身もめちゃくちゃハマっていて、とてもおすすめしたい趣味のひとつです。
しかし、あまり美術館に行ったことがない人にとっては、「絵画の見方がわからない」「静かな場所だし、特別なルールがあるのかな?」など、なんとなくハードルが高いと感じてしまうのではないでしょうか。
この記事では、美術館の楽しみ方のポイントや、美術館でのルールやマナーをお伝えします。
美術館の楽しみ方
それでは、美術館の楽しみ方を紹介して行きます。
作品を直観的に楽しむ
これが、一番イメージしやすいと思うのですが、作品を見て、ありのままの感情を受け止めてみます。
「ありのままを感じる」というと、難しいかもしれませんが、「可愛い」、「気味が悪い」、「色がいっぱいでカラフルだなー」とか、そんな感じで大丈夫です。
例えば、下の絵を見てください。
こちらは、シニャックという画家の作品なのですが、よく見ると、絵の具で点をたくさん描いてこの絵ができています。
「点がいっぱいだ!すげー!」とか、「色彩が明るいぞ!」とか、「雲の感じが好き」とか、人によっていろいろな感情が生まれてくると思います。
とりあえず、難しいことは考えず、等身大の自分で、そのままの感情を受け止めてみましょう。
近代、現代アートの作品になってくると、「何を描いてるんだろう?」、「よくわからない」と、感じることもあると思います。
しかし、この「よくわからない」という気持ちも、作品を知っていくために大事だったりします。
3Dで楽しむ
作品を観るとなると、正面から観ることが多いと思うのですが、銅像や刀剣などの立体物であれば、正面からだけではなく、裏や下側も見て楽しむことができます。
展示の仕方にもよりますが、可能そうであれば、裏側や下側も覗いてみてみましょう。
また、絵画も意外と平面というわけではなくて、絵の具を厚塗りする画家の作品の場合、斜めから観ると、絵の具が立体的に盛り上がっていたりします。
世界的に有名な画家のゴッホも、絵の具を厚塗りで描くタイプの作家です。
作者の心を想像してみる
最初は、「明るいタッチの作品が多いから、陽気な人なのかな」とか、そんな感じで構わないので、作者の心を想像してみると良いでしょう。
そういった、癖をつけておくと、美術的な知識がついた時に、より絵画を深く楽しむことができるようになってきます。
例えば、ゴッホの「花咲くアーモンドの木の枝」という作品があります。
この作品をみて、ゴッホの心を想像してみましょう。
可愛らしい絵で、春の訪れに心が踊ったのかな?などと想像することができます。
しかし、この絵が描かれた背景を知ると、この絵はゴッホが弟のテオに子供ができた時に送ったものであることを知ることができます。
ゴッホはそこまで考えていなかったかもしれませんが、アーモンドの花言葉が「真実の愛」や「希望」であることを知ると、また違ったゴッホの気持ちを想像することができます。
想像した気持ちが正解かどうかは置いておいて、自分なりにアーティストの気持ちと寄り添って、心の中で対話をしてみましょう。
展示している作品を買うならどれを選ぶか考えてみる
美術館の展覧会の作品をひとつだけ購入して、家に飾るとしたら、どの作品を購入するかを考えてみるのも結構楽しいです。
作品の美しさに惹かれたのか、作品の解説に共感したのかなどを、一段階深く考えることができるし、自宅のリビングに飾ろうかなとか、玄関の棚の上に置いておこうかなとか、妄想していると結構ワクワクしてきます。
完全に余談ですが、若手のアーティストの1点ものの作品や、名画のレプリカをレンタルしたり、購入したりできるサブスクサービスもあるので、興味のある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
推しを作る
「推し」とは、好きな人や応援したい人などのことを指すのですが、推しを作ると美術館巡りをより楽しむことができます。
答えは簡単で、例えば、知らないおじさんの絵よりも、大好きなおじさんの絵の方が観ていて楽しいからです。
聞いたことがある画家の名前をYouTubeなどで検索して、どんな人物だったかを調べるのが手軽で良いでしょう。
例えば、ゴッホについて調べると、一例ですが次のようなことがわかります。
- ゴッホは、「ひまわり」の絵が有名
- 絵は、厚塗りのタッチのことが多い
- 新宿のSOMPO美術館にひまわりの絵が所蔵されている
- 生きている間は、ほとんど絵が売れなかった
- 家計が厳しいので、絵の具などの画材は、弟の「テオ」が用意していた
これらのことが分かれば、「弟に絵の具を買ってもらってるのに、こんな厚塗りにどんどん使っちゃうんだー」とか、「日本国内でひまわりが見れるなら、いつか行ってみたいな」といったような、楽しみ方もできます。
推しが一人できれば、そこから派生させて、その時代の絵画や交友のあったアーティストのことを知りたくなったりと、次々に美術の情報に興味がわいてきます。
パンフレット・出品リスト集める
美術展に行くと、その展覧会のパンフレットや、出品リストが置いてあり、自由に持ち帰ることができます。
出品リストとは、文字通り、その展覧会でどのようなものが書かれているかをリスト化したものです。
これから先、美術館巡りを趣味にしていると、「あれ、あの作品見た気がするけど、本当に見たっけ?」「あの絵のタイトルなんだったっけ?」と、忘れてしまうことも正直あります。
そういった時に出品リストを集めておけば、後から確認することができます。
ミュージアムショップで、その展覧会のグッズをコレクションする方法もあると思うのですが、美術館に行く数が増えるにつれて、金銭的に少し辛くなってきます。
パンフレットや出品リストは、無料です。
手軽に集めることができます。
ミュージアムショップを楽しむ
ミュージアムショップに寄ってみるのも美術館の楽しみ方の一つです。
美術館によって異なるのですが、だいたい美術展を見て回ると、最後の方にその美術展で展示された作品をモチーフにしたグッズが売られています。
魅力的な作品が多く、筆者も買うのを我慢するのに、毎回格闘しています。
個人的には、安くて、持って帰ってもあまり場所をとらない次のようなものがおすすめです。
例としては、下記のようなものが挙げられます。
- クリアファイル
- ポストカード
- マグネット
- しおり(ブックマーク)
美術館併設のカフェを楽しむ
カフェが併設されている美術館に行くときは、カフェでお茶したり、ランチしたりするのも楽しみ方の1つです。
カフェが併設されている美術館は、結構多いです。デートの時に使ったりするのも良いかもしれませんね。
ちなみに上の写真は、東京都現代美術館のカフェに行って、ランチした時の写真です。
場所によっては、特別展の展示内容とコラボしたデザートやランチセットがあるようなカフェもあります。
ただ、人気があるカフェの場合、行列ができたりするので、昼の12時など混雑しそうな時間帯は、避けることをおすすめします。
僕は、カフェがオープンする11時ごろにカフェに行き、混雑を避けることが多いです。
SNSでシェアする
美術館を楽しんだら、インスタグラムなどのSNSに、展覧会の写真をアップしてみましょう。
自分が感じた感動を、美術館巡りが趣味の人たちと共有することができます。
僕も、行った展覧会の写真をインスタグラムにアップしているのですが、普段の日常生活では会わないようなアート好きなお友達が何人かできました。
美術館コーデを楽しむ
美術館に行く際には、少しおしゃれをして出かけるのもおすすめです。
美術館には、別にドレスコードなどはなく、自由な服装で作品を観ることができます。
しかし、美術館という非日常的な空間に、いつもより少しだけおしゃれをして出かけると、とても気分が良いものです。
個人的には、モノトーンやシンプルなデザインの服を選ぶと、美術館の落ち着いた雰囲気にマッチするのではないかなと思います。
美術鑑賞中は、立ちっぱなしで足が疲れるので、靴はスニーカーやカジュアルめの革靴など、足が疲れにくいものを選ぶことをおすすめします。
美術館を楽しむために知っておきたいポイント
それでは、美術館を楽しむために知っておきたいポイントを紹介していきたいと思います。
自分が興味のあるジャンルを選ぶ
「美術館」と聞くと、絵画を観に行くイメージが強いと思うのですが、意外と多彩なジャンルがあります。
ちなみに一例ではありますが、次のような展示があります。
- 日本画(浮世絵・水墨画・近代日本画など)
- 西洋画
- 現代アート
- 絵本
- 漫画
- アニメーション(ジブリ展など)
- 写真
- 切り絵
- 仏像
- 日本刀
- 北欧食器・北欧家具
- 古代エジプト美術
- 没入体験型
- 建築(サグラダファミリア展など)
- ファッション
たくさんありますよね。
今紹介したもの以外にも、いろいろなジャンルのものがあります。
その中から自分が気になる展覧会を選ぶと、よりアートを楽しめるのではないかと思います。
最初は、自分がどんなものに興味があるか、分かりにくいこともあるので、このあたりは場数を踏んで自分の好みを把握していきましょう。
特別展と常設展の違いを知っておく
美術館の展示には、「特別展」と「常設展」があります。
特別展は、期間限定で開催され、特定のテーマやアーティストに焦点を当てた展示を行います。
例としては、「ゴッホ展」、「モネ展」、「印象派展」といったものがあげられます。
期間が限定されていたり、集客性がある展覧会のものが多いので、後で説明する常設展よりも人気が高い傾向があります。
これに対して、常設展、は美術館が所蔵しているコレクションの展示を行います。
一般的に特別展よりも、常設展の方が料金がリーズナブルなことが多いです。
常設展の例で言うと、僕が住んでいる広島県には「ひろしま美術館」という美術館があり、ゴッホの「ドービニーの庭」という作品が所蔵されています。
時期によって、展示品の入れ替えはありますが、ひろしま美術館に行くと、だいたい展示されていて、作品をいつでも楽しむことができます。
有名なアーティストの作品が見れる可能性が高いことや、話題性も高いことから、まずは特別展に行ってみることをおすすめします。
その絵画が、描かれた時代背景や、画家の作風を知っておく
少し応用編かもしれませんが、時代背景や芸術的流れ、アーティストの特徴を理解することで、よりディープな楽しみ方をすることができます。
ここは、ファッションにも通じるところがあるのかなーと勝手に思っていて、例えば「昔は黒スキニーが流行ったけど、今はカジュアルトレンドで、太めのパンツが流行っている」とか、「女性用のスーツがないなんておかしいじゃないか。女性用のパンツルックのスーツを作るぞ!」みたいなことが、アートの世界でも起こっています。
その時の流行りや、伝統に対する反発から、新しいアートが生まれてきます。
人気の高い印象派も、そのようなムーブメントの中から、生まれました。
後の「美術館巡りをより楽しむために」の項目でも説明しますが、ほんの少しだけ知識があれば、何倍にも作品の楽しみ方が膨らむのが、美術鑑賞の醍醐味です。
印象派について、興味がある方は、こちらの記事も参考にしてください。
美術館でのマナーとエチケット
美術館では、美術品を守るためであったり、周りの人に迷惑をかけないために、最低限のマナーやエチケットを守ることが大切です。
展示物に触れてはいけない
作品や展示ケースに触れることは、作品を損傷する恐れがありますので、絶対に避けましょう 。
ガラスケースを触ったりするのも、指紋が残ったりしてしまうのでやめましょう。
実際に、他のお客さんが手で触ってしまい、注意されているところをたまに見かけます。
展示室にあるものは、基本的に触らないように気をつけましょう.
静かに鑑賞する
全く喋ってはいけないわけではないのですが、大声で話したり、騒がしい行動はNGです 。
誰かと一緒に行く場合でも、極力話したりすることは控えて、用事がある場合も小声で喋るようにしましょう。
写真撮影のルールを守る
基本的には、写真撮影は禁止です。
ただし、展覧会の中には、一部の作品が撮影OKだったり、展覧会全部の作品が撮影OKだったりする場合もあります。
展覧会の入り口などに、写真撮影可能かどうかが書かれているので、確認しておきましょう。
また、撮影が許可されている場合でも、フラッシュ撮影は禁止されていることがほとんどです。
撮影のルールを事前に確認しておくことも大切です 。
たまに、写真撮影可能かどうかが、わからない場合は、近くのスタッフに聞いてみましょう。
僕も何回か聞いたことがあるのですが、スタッフの方が快く返答してくれます。
展示室内は、飲食禁止
食べ物や飲み物を展示室内に持ち込むことは、作品を損傷する恐れがあるため禁止となっています。
ガムや飴玉もNGです。展示室内に持ち込まないようにしましょう。
携帯電話は、マナーモードにする
館内では携帯電話をマナーモードに設定し、使用を控えましょう 。場合によっては、携帯電話を持って、画面をみているだけで、スタッフの方が駆け寄ってくるケースもあります。
ちなみに僕は、当時90歳の自分のおばあちゃんと美術館に行った時に、おばあちゃんがスマホのマナーモードを設定し忘れてて、静かな館内にスマホの音が鳴り響いて、美術館のスタッフさんから注意を受けてしまいました。皆さんも、鑑賞前にマナーモードになっているかどうかの確認を必ずしてくださいね。
ボールペンは、使ってはいけない
ボールペンは、万が一インクが飛んで作品を汚してしまった場合、修復が難しいため、展示室での使用は禁止されています。
鉛筆は、使用してもOKなので、何かメモしたいことがある場合は、鉛筆を使用してください。
リュックは、コインロッカーに置いておく
リュックを背負っていると、背中側でリュックと作品がぶつかって、作品を破損してしまう可能性があります。
基本的に、リュックは避けた方が無難ではありますが、ほとんどの美術館にコインロッカーが設置されてあります。
それに、リュックに限らず、荷物を預けることで、身軽に美術館を回ることができます。
お金が返ってくるタイプのコインロッカーがほとんどなので、積極的に活用しましょう。
まとめ
この記事では、これから美術館巡りを趣味にしたい人に対して、美術館を楽しむためのポイントを説明させていただきました。
美術館に行く際は、自分の興味があるジャンルを選んでいくことがおすすめです。
また、美術館に行ったら、最初は全体を軽く見て回り、特に気になった作品は後で時間をかけてじっくりと向き合うと良いと思います。
作品の見方に少し慣れたり、知識がついてくると、美術鑑賞の楽しさがより一層深まります。
美術館巡りの楽しみ方は、作品鑑賞だけではなく、ミュージアムショップやカフェの利用、SNSでのシェア、美術館に合わせたファッションを楽しむことにもあります。
美術館でのマナーやエチケットを守って、美術鑑賞を楽しんでください。