「ちりとてちん」という言葉は、過去にNHKの朝ドラのタイトルになったこともあるので、なんとなく聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
落語「ちりとてちん」は、江戸落語の「酢豆腐」としても知られるお話で、知ったかぶりがテーマの演目です。
この記事では、落語「ちりとてちん」の登場人物やあらすじについて紹介していきます。
落語「ちりとてちん」とは
「ちりとてちん」とは、古典落語の演目の一つです。
上方落語では、「ちりとてちん」というタイトルで、江戸落語では、「酢豆腐」というタイトルで演じられ、多くの人に親しまれています。
ちなみに、上方落語とは関西の落語のことで、江戸落語とは東京の落語のことです。
このお話は、なんでも知ったかぶりをする通ぶった男に、腐った豆腐を珍味と言って、食べさせて、その知ったかぶりや腐った豆腐を食べたリアクションを見ながら楽しむというお話です。
初心者でもわかりやすい内容のため、落語を初めて楽しむ方にも、おすすめの演目です。
ちなみに、元々は、江戸落語の「酢豆腐」というお話でしたが、初代柳家小はんが改作したものを大阪に移したことで、「ちりとてちん」という題で、演じられるようになったと言われています。
現在では、ちりとてちんが、東京に逆輸入される形となっており、東京の寄席でも「ちりとてちん」を聞くことができます。
登場人物
それでは、ちりとてちんの登場人物を紹介していきます。
下で紹介している喜ィさんや竹さんは、演じる噺家によって、名前が違う場合があります。
旦那
碁の集まりを開きますが、急に集まりがなくなってしまい、困っています。
喜ィさんのことはよく思っていますが、文句ばかりの竹さんのことは、あまりよく思っていません。
喜ィさん
旦那の家のお向かいに住んでいます。
なんでも美味しそうに食べる男。
褒め上手で、口のうまい人物です。
竹さん
旦那の家の裏に住んでいる人物。
旦那がお世話をしてあげても文句ばかりで、無愛想な人物です。
あらすじ
それでは、落語「ちりとてちん」のあらすじを紹介していきます。
用意した料理が余ってしまい、困っている夫婦
とある夫婦が、困って相談する場面からこのお話は始まります。
どうするよ?
これだけの料理をおまえと私の2人だけじゃ、とてもじゃないけど食べきれないよ。
実は、この日、碁の集まりを開いた旦那でしたが、急に集まりが流れてしまい、用意した料理が大量に余ってしまい、困っているところです。
このまま捨ててしまうのももったいないので、誰か食べてくれる人がいないかを夫婦で考えたところ、お向かいに住んでいる喜ィさん(きぃさん)を呼ぶことを思いつきます。
喜ィさんが、旦那の家にやってくる
そうこうしていると、喜ィさんが旦那の家にやってきます。
急に呼んですまないね。
いや、碁の集まりが流れてしまってね。
用意した料理を、喜ィさんに食べてもらいたくてね。
えぇ!?いいんですか!?
こんなに美味しそうな料理を!!
ありがたくいただきます。
ちなみに喜ィさんは、なんでも喜んで食べるし、口の上手い人物なので、旦那も喜ィさんのことを気に入っています。
喜ィさんは、お酒や鯛のお刺身、鰻の蒲焼を食べて、過剰なほどに褒めちぎるので、お世辞とは分かりつつも、旦那も悪い気がしません。
竹さんという人物の話になる
喜ィさんが、そうやって喜んで食べてくれると、ご馳走のしがいがあるよ。
それに比べて、アイツときたら…
あいつとは、裏に住んでいる「竹さん」という人物のことで、旦那が世話をしてあげても、お礼も言わず文句ばっかりで、無愛想な人物です。
旦腐った豆腐を竹さんに食べさせることを思いつく。
竹さんの話をしていたところ、先日、水屋に入れたままにしていた豆腐があったことを思い出します。
豆腐は、4〜5日置かれたままにされており、カビが生えたり、腐ってしまっています。
竹さんに食べさせて、一泡吹かせてやろう。
知ったかぶりで見栄っ張りなあいつのことだ。
形を変えて、どこかの名産ということで食べさせれば、知らないとは言えないだろう。
そうして旦那は、豆腐をぐちゃぐちゃに潰して、唐辛子などと一緒に混ぜます。
この得体の知れない食べ物を、長崎名物「ちりとてちん」として、竹さんに食べさせることにしました。
ちなみに、「ちりとてちん」とは、ちんとんしゃんなどと同じように、口三味線の音階からきています。
竹さんが旦那の家にやってくる
なんだよ急に呼び出しやがって。
いやー、すまない。
料理が余ってね。
もしよかったらと、食べないかい?
もっと早く呼んでくれよ。
しょうもない酒だなー。
まぁ、食べてやるけど。
こんな形で、竹さんはいつものように、出てくる酒や料理などの文句をつらつらと並べていきます。
「ちりとてちん」のことを知っていると、知ったかぶりをする竹さん
鰻の蒲焼に鯛の刺身店…。
つまらねぇなぁ。
俺を驚かせたかったら、俺が食ったことない珍味でも用意してみろってんだ。
珍味!!
ちょうどいいのが、あるんだよ。
珍味??
何があるんだ?
竹さんは、長崎に行ったことがあるって聞いてるから、多分知ってると思うんだけど、長崎名物の「ちりとてちん」って食べ物聞いたことがあるかい?
ちりとてちん?
聞いたことあるに決まってるだろ。
あっちにいた頃は、毎日のように食ってたよ。
それはよかった!
それなら、持って来させましょ。
そう言うと、妻がちりとてちん(腐った豆腐)を持ってきます。
ちりとてちんをなんとか食べる竹さん
妻がちりとてちんを持ってくるのですが、その匂いに竹さんはびっくりしてしまいます。
くっさ!!
なんだこれは!!
ちりとてちんだよ。
いつも食べてたんだろ?
あ…、あぁ!
そうだよ!食べてたよ!
知ったかぶりをしてしまった手前、竹さんは後に引き下がることはできません。
ひどい匂いですが、なんとか我慢してちりとてちんを食べます。
パクッ…
お、おぇ…
う、美味い…
美味いならよかった。
ちなみに、私らは、食べたことがないんだが、どんな味がするんだい?
そう聞かれ、竹さんは次のように答えます。
ちょ…、ちょうど、豆腐が腐ったような味だな…
この一言がオチとなり、このお話は終わります。
まとめ
この記事では、落語「ちりとてちん」のあらすじや登場人物などについて、紹介させていただきました。
上方落語では「ちりとてちん」というタイトルで、江戸落語では「酢豆腐」というタイトルで、多くの人に親しまれています。
この記事以外にも、落語のことについて知りたいという方向けに記事を作成していますので、参考にしてみてください。