落語「長屋の花見」のあらすじやオチについて、知りたいと思っていませんか?
「長屋の花見」は、数ある落語の演目の中でも、代表的な話のひとつです。
この記事では、長屋の花見のあらすじやオチ、登場人物などについて紹介します。
落語「長屋の花見」とは?
落語「長屋の花見」は、貧乏な長屋の大家とそこの住人たちが繰り広げる笑い話です。
大家が、「ご馳走を用意したので花見に行こう」と住人たちを誘います。
住人たちは喜んで着いて行こうとするのですが、実はご馳偽ではなく、本物に似せた食べ物を用意していたというお話しです。
このお話は、みんなで花見をしに行くという内容の話なので、桜の開花前の時期になると寄席(落語の演芸場)でもよく演じられます。
もともと、上方落語(関西の落語)で話されていたお話なのですが、明治30年代に三代目蝶花楼馬楽(ちょうかろうばらく)が東京に持ってきたと言われています。
「長屋の花見」の主な登場人物
それでは、落語「長屋の花見」の登場人物を紹介します。
大家
長屋の大家さん。
世間で自分の長屋が貧乏長屋だと噂をされていることを気にしています。
そのような評判をなくすため、景気良くみんなで花見に行こうと言い出します。
長屋の住人たち
貧乏長屋の住人たち。
大家さんに家賃を払っていない人たちがほとんどです。
大家さんの見栄っ張りな行動にあれこれと文句は言いますが、その状況を楽しもうとする姿もみられ、憎めない人たちです。
「長屋の花見」のあらすじ
それでは、「長屋の花見」のあらすじを紹介します。
大家に長屋の住人たちが呼び出される
場所は、とある貧乏長屋。
長屋の大家から呼び出された住人たちが、何やら話している場面から、このお話は始ります。
大家さん、なんで俺たちを呼び出したんだろうな?
そりゃ店賃(家賃)の催促だろ。
まともに払ってるやつが、誰もいないからな。
1年前から家賃を払っていない人、18年前から家賃を払っていない人、親の代から家賃を払っていない人などさまざまです。
このような調子で、大家に呼び出された理由は、家賃の催促だろうと住人たちで話しています。
大家のところに行く
住人たちは、おそるおそる大家の家に行きます。
集まったみたいだな。
今日、みんなを呼んだのは、他でもない。
桜も綺麗だから、みんなで上野に花見に行こうと思ってな。
呼び出された理由は、住人たちの予想とは裏腹に、花見に行こうという誘いでした。
というのも、世間で「あそこの長屋は、貧乏長屋だ」と噂をされているらしく、花見にでも行ってその噂を払拭したいとのことです。
花見ですか?
花見って言っても、俺ら貧乏だからお酒も何も用意できませんよ?
お酒や食事は自分が準備していると言い出す大家
お酒や料理を準備できないと言う住人たちに対して、大家は次のように返します。
大丈夫。
それなら、誘っている私が用意してある。
お酒に、かまぼこに、卵焼きだ!
え!?
本当ですか!?
ありがとうございます!
ありがとうございます!
ありがとうございます!
ご馳走をしてくれると言う大家に対し、浮き足立つ長屋の住人たちですが、何やら様子がおかしいようです…。
本当のことを話し始める大家。
そ…、そんなに喜ばれると困っちゃうなぁ…。
本当は、花見についてから言おうと思ったんだけど…。
そう言いながら、長屋の住人たちに本当のことを話し始めます。
実は、お酒があると言ったんだけど、本物じゃないんだ。
え?
どういうことですか?
このお酒の瓶の中身は、番茶を薄めたものなんだ。
見た目がお酒にそっくりだろ?
え?
お酒じゃなくて、番茶を薄めたものなんですか!?
そうだな。
お酒じゃなくて、お茶け(おちゃけ)だな。
くだらないこと言わなくていいんですよ。
まぁ、お酒がなくても、玉子焼きとかまぼこがあるんならヨシとするか。
そう言う長屋の住人に対し、大家は次のように返します。
実はな、この卵焼きに見えるやつは「たくあん」だ。
そして、かまぼこに見えるやつは、「大根のこうこ(漬物)」だ。
どっちも大根ってことだな。
かまぼこと玉子焼きが食べれると思ったら、色違いの大根並べちゃって!
全部偽物ってことですか!?
そうだよ。
でも、見た目じゃわからないんだからさ、これを持って行って花見をしてたら、あの貧乏長屋も景気がいいじゃないかってなるだろ!
大家のカミングアウトで、実はご馳走が偽物だったことを知った長屋の住人たちでしたが、文句を言いながらも大家と花見に行くことにしました。
花見会場に着いた一同
ワイワイと話しながら、大家と長屋の住人たちが、上野の山に到着します。
それじゃ、敷物を敷いて、食べ物とお酒を並べて。
一同は、毛せんの代わりに持ってきたむしろを地面に広げて、宴会を始めます。
しかし、番茶とたくあんと漬物なので、なかなか盛り上がりません。
おい、そっちにある「かまぼこ」をとってくれよ。
かまぼこだな。
取ってあげるよ。
私ね、かまぼこが大好きなんですよ。
二日酔いの朝にかまぼこおろしを食べたりするんです。
そういえば、練馬のかまぼこ畑もずいぶん減ったなぁ〜。
私は、かまぼこの葉っぱが好きなんです。
かまぼこの気分を味わいたいのに、大根の話ばかりで台無しじゃないか。
すると、別の住人が大家に話しかけます。
大家さーん!
そこの玉子焼き取ってくださーい!
大きな声で、気持ちがいいねぇ。
周りの連中も「玉子焼きなんか食ってんのか」って、羨望の眼差しでこっちを見てるよ。
はい、どうぞ。
これじゃなくて、しっぽじゃねぇ方をください!
(※しっぽ:たくあんの端っこ)
全く、お前も台無しだよ。
なかなか盛り上がらない現状に、大家は少し腹を立ててしまいます。
どいつもこいつも盛り上がらねぇことを言うな。
おい、これでも飲んで酔え!
大家は、番茶を差し出し、それを飲んで酔えと言い始めます。
酔えって言われたって、これ番茶ですよ?
お酒のつもりで酔うんだよ。
わかりましたよ…。
ゴクゴク…
はぁぁぁ、うめぇ!!
こりゃ、酔っ払っちまったなぁ!!
よしよし。
なかなかいいぞ。
その酒はな、灘の生一本(なだのきいっぽん)だ。
(※灘は、お酒の名所。生一本は、一カ所で製造され混じり気がない酒)
灘?
宇治かと思いましたよ。
お茶の話は、いいんだよ。
酔った気分は、どうだい?
そうですね。
去年の秋に、井戸に落っこちた時と同じ心持ちですな。
嫌なことを言うんじゃないよ。
そのような形で、文句を言いながらも一同は、ワイワイと花見を楽しんでいます。
オチ:酒柱が立つ
花見を楽しんでいると、長屋の住人の1人が、大家に話しかけます。
大家さん!
きっと近々、長屋にいいことがありますよ!
ん?
どうして、そんなことがわかるんだい?
これを見てください。
「酒柱(さかばしら)」が立ってます。
このように、酒に見立てた番茶を飲んでいるため、「茶柱ならぬ酒柱が立った」というオチで、このお話は終わります。
大家が用意したお酒や玉子焼きの正体は?
このお話では、大家がご馳走を用意していると言いますが、豪華なものは準備できず、下記のものを準備していました。
- お酒の代わりに、「番茶を薄めたもの」
- 玉子焼きの代わりに、「たくあん」
- かまぼこの代わりに、「大根のこうこ(漬物)」
お茶と大根だけで、あれだけ盛り上がれる登場人物たちってすごいですよね!
まとめ
この記事では、落語「長屋の花見」のあらすじやオチについて紹介しました。
このお話は、貧乏長屋の大家が住人たちを花見に誘います。
ご馳走を振る舞うという大家でしたが、実際用意したものは、「お酒に見立てた番茶」、「玉子焼きに見立てたたくあん」、「かまぼこに見立てた漬物」でした。
それらご馳走の代用品を持って、上野の山で花見をします。
あーだこーだと言いながら、ワイワイガヤガヤと花見を楽しむという話でした。
貧しいことに文句を言いながらも、その場を楽しもうとする江戸っ子たちに心が温まるお話でした。
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