落語「粗忽長屋(そこつながや)」は、古典落語の演目のひとつです。
この演目のタイトルにもなっている「粗忽」とは、そそっかしいという意味のある言葉です。
「粗忽長屋」は、2人の粗忽者が出てきて、話がとんでもない方向に行ってしまうという、シュールな展開が魅力のお話です。
この記事では、落語「粗忽長屋」のあらすじやオチについて紹介します。
落語「粗忽長屋とは」
「粗忽長屋(そこつながや)」は、古典落語の一つで、「粗忽者」と呼ばれるキャラクターたちが巻き起こす滑稽なエピソードを描いた作品です。
このお話の中心にいるのは、長屋に住む主人公と熊五郎という二人の人物です。
ある日、主人公が人だかりを見つけ、その人だかりを覗いてみると、なんと行き倒れている人がいて、そのため人だかりができていたことを知ります。
そうして、行き倒れた死体の顔を見て、主人公は、死体が親友の熊五郎だと気づきます。
本当は、この死体は熊五郎ではないのですが、そそっかしい主人公は、死体を熊五郎だと思い込んでしまい、挙げ句の果てには、生きている熊五郎までも、自分自身が死んだと信じてしまうという、シュールなお話です。
この2人のそそっかしさが、このお話の笑いどころです。
登場人物
それでは、主な登場人物を紹介します。
主人公(粗忽者)
主人公は、典型的な粗忽者で、そそっかしく、思い込みの激しい性格の人物です。
このお話の中でも、亡くなっている人物を親友の熊五郎と勘違いしてしまい、どんどん話がおかしな方向へ行ってしまいます。
熊五郎
主人公に負けず劣らずの粗忽者。
主人公に「浅草でお前が死んでいた」と言われ、実際に死体を見にいき、それが自分だと信じ込んでしまいます。
町役人
浅草で身元不明の死体の関係者を探していたところ、主人公と出会います。
主人公の思い込みに振り回されてしまいます。
あらすじ
では、落語「粗忽長屋」のあらすじを紹介します。
浅草にて、人だかりを見つける主人公
ある男が、浅草の観音様にお参りに行った際、雷門のあたりに、何やら人だかりができているのを見つけます。
なんだい。
やけに騒がしいな。
近くにいる人に何があったかを聞いても、人が多すぎて、何があったかはわからないとのこと。
なんとか人だかりを避けながら、前の方に行ってみると、そこには町役人がいました。
これは、何があったんだい?
行き倒れだよ。
人が亡くなってたんだ。
身元が不明なんだが、お前さんも知り合いじゃないか見ておくれ。
そう言われ、主人公は、身元不明の死人の顔を見てみます。
すると…。
なんてこった!!
こいつは、熊五郎の野郎じゃねぇか!!
お知り合いなんですか!?
知り合いも何も、熊五郎と俺は、唯一無二の親友よ。
こんな姿になっちまって…。
浅草で行き倒れになっていた死体は、なんと主人公と同じ長屋に住んでいる兄弟分の熊五郎だったのです。
死体は本当に熊五郎?
知り合いが見つかってよかった…。
熊五郎…
今朝は、あんなに元気だったのによう…
今朝!?
今朝、その熊五郎っていう人と会ったのかい!?
そうだよ!
朝は、熊五郎のやろうピンピンしてやがったんだ!
それなら人違いだな。
この遺体は、昨晩からあったからな。
じゃあ何かい!?
俺が親友の熊五郎の顔を見間違えたって言いてぇのかい!?
冗談じゃないよ!!
でも、昨晩からこの遺体はここにあったから、今朝、その人と会ったっていうことは違うってことだろう?
いやいや、熊五郎はそういうそそっかしい奴なんだよ!
まだ、自分が死んだことに気づいてねぇんだなぁ、かわいそうに。
そんなに信じられないなら、本人を連れてきてやるよ!!
え…?
本人を連れてくる…?
そんな調子で、亡くなった遺体を熊五郎と思い込んでしまった主人公は、熊五郎を呼ぶため、長屋へ戻ります。
主人公が長屋に熊五郎を呼びに行く
主人公が、熊五郎を呼ぶために、長屋へ戻ってきました。
おーい!熊五郎!
熊はいるか!?
おう、兄貴かい。
どうしたんだい?
熊…。
心して聞いてくれよ。
お前の死体が浅草にあったんだよ!
お前は、死んじまってるんだよ!
俺がかい??
良くは寝てたけど、死んではねぇんじゃないかな…
死んだ心地も、しないしな…
お前、死ぬのは今回が初めてだろ?
死んだ心地なんかわかるもんかい。
昨日から、お前は死んでるんだ。
昨日何してたか言ってみろ!!
昨日は、酒を飲んだ後、吉原に行って…
あれ?その後が思い出せねぇなぁ…
そらみろ!
その時に死んじまったんだよ!
そうか…。
俺はその時、死んじまったんだなぁ…
なんと、熊五郎も自分が死んだことを信じてしまったのです。
こうして、熊五郎が死んでしまったと信じ込んでしまった2人は、遺体のある浅草に戻ることにします。
浅草に粗忽者2人が戻ってくる
主人公と熊五郎が、浅草に戻ってきます。
見てみろ、あれがお前の遺体だよ。
うわぁー、本当だ…。
俺が死んでやがる…。
うわっ。
また、変な野郎が増えやがった。
呆れてしまった町役人をよそ目に、主人公と熊五郎は、死体を家へ運ぶことにしました。
熊五郎、それじゃあ、お前を連れて帰るぜ。
そう言って、主人公は、熊五郎に遺体を抱えさせます。
すると、熊五郎から…
兄貴、俺、わからねぇことが出来ちまった…
ん?
なんだい?
なぁ、いま抱いてる死体は俺なんだろ?
あぁ、お前だよ。
そう言われると、一言。
じゃあ、抱いている俺は、一体どこの誰なんだい?
この一言がオチとなり、この話は終わります。
まとめ
この記事では、落語「粗忽長屋」のあらすじや登場人物などについて、紹介させていただきました。
粗忽長屋は、粗忽者の主人公と熊五郎が引き起こす、シュールな展開が魅力の演目です。
この他にも、これから落語を楽しみたいという方向けに、落語に関する記事を書いていますので、そちらも参考にしていただければと思います。