この記事では、古典落語の演目の「寿限無(じゅげむ)」の登場人物やあらすじについて紹介しています。
また、寿限無の長い名前の意味についても解説にしているので、気になる方は読んでみてください。
落語「寿限無」の概要
ざっくり、寿限無はどんな話?
後で、もう少し詳しく紹介しますが、「寿限無」がどんな話かを簡単に紹介したいと思います。
ある夫婦に、待望の男の子が生まれました。
長生きと幸福を願って良い名前をつけたいと思った夫は、お寺の和尚さんに名前をつけてもらうために相談に行きます。
和尚さんは、長寿と幸福に関するたくさんの縁起の良い言葉をいくつか提案しますが、夫はその全てを、息子の名前にすることを決めます。
その結果、生まれた子供の名前がとても長くなってしまったという笑い話です。
「寿限無」の歴史
落語のお話の中には、昔から伝わる古典落語と、近代の落語家さんが作った新作落語というものがあります。
寿限無は、古典落語の一つで、この噺(はなし)は、1884年以前にはできており、一説によると19世紀半ばには、存在していたのではないかと言われています。
「寿限無」の楽しみ方
寿限無は、滑稽噺(こっけいばなし)、つまりストーリー自体が笑える話ではあるのですが、落語の終盤にかけて、寿限無の長い名前を何度も早口言葉のようにたたみかける場面があります。
その早口言葉の場面に持っていくまでの話し方の緩急や、早口言葉のたたみかけなど、落語家さんのテクニック的な部分も楽しめる要素の一つだと思います。
寿限無のように決まったセリフで笑いをとることを、「言い立て」と言ったりします。
寿限無は、シンプルなお話なので、落語家さんのテクニックがより際立つ作品だと感じます。
寿限無の登場人物とあらすじ
それでは、寿限無の登場人物を紹介していきます。
「寿限無」の登場人物
【寿限無(じゅげむ)】
このお話の主人公。
父に長い名前をつけられます。
主人公ではありますが、落語のお話ではセリフがないことがほとんです。
【おとっつぁん】
寿限無の父。
息子に長い名前をつける重宝人です。
待望の息子が生まれて、さぞ寿限無の幸せを願ったのでしょう。
【和尚さん】
寿限無の父に、息子の名前についてアドバイスをします。
ただ、アドバイスする人が和尚さんでない場合もあり、町の物知りみたいな人というパターンもあります。
【おかっつぁん】
寿限無の母。
常識人のように思えますが、父が決めた息子の長い名前にOKを出してしまうので、意外と変わり者かも!?
【寿限無の友達】
寿限無の友達。
すくすくと育ちやんちゃになった寿限無に殴られて、たんこぶを作ってしまいます。
寿限無のあらすじ
それでは、寿限無のあらすじを紹介していきます。
息子が生まれ、父が名前の相談にいく
物語は、ある夫婦(寿限無の両親)が、息子を授かり、夫が和尚さんのところに息子の名前の相談に行くところから始まります。
この度子供が生まれたんですが、何か縁起のいい名前はありませんか?
そうだな。寿限無(じゅげむ)なんてのがあるな。
「ことぶき、限りなし」と書いて寿限無だ。
縁起の良い名前だろう。
へぇへぇ、なるほど。
他にも何か候補は、ございませんか?
こんな調子で、和尚さんがいくつか名前の候補をあげてくれます。
和尚さんが教えてくれた名前の候補は、次のとおりです。
- 寿限無(じゅげむ)
- 五劫の擦り切れ(ごこうのすりきれ)
- 海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)
- 水行末 雲来松 風来末(すいぎょうまつ・うんらいまつ・ふうらいまつ)
- 食う寝る処に住む処
- やぶらこうじのぶらこうじ(やぶらこうじのやぶこうじ)
- パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナ
- 長久命の長助(ちょうきゅうめいのちょうすけ)
それぞれの意味については、この記事の後半の「寿限無の長い名前の意味」のところで解説しています。
候補の名前を全てくっつけて、命名してしまう父
ここまで、紹介したものは、全て
縁起の良い名だ。どれにするかね?
うーん。
全部縁起の良い名前で、決めきれねぇなぁ…。
よし!この際だから、全部使っちまおう!
このような感じで、息子の名前は、次のように命名されます。
寿限無寿限無、五劫の擦り切れ
海砂利水魚の水行末・雲来松・風来末
食う寝る処に住む処、やぶらこうじのぶらこうじ
パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助
寿限無は成長し、数年後
命名から数年が経ち、寿限無は成長し、名前もすっかりと、周りの人たちに覚えられます。
そんなある日のこと…。
うわーん!おばちゃーん!
「寿限無寿限無五劫の擦り切れ、海砂利水魚の…(省略)」が、
僕の頭を殴って、たんこぶができちゃったー!
ごめんなさいね、金ちゃん。
つまり、うちの「寿限無寿限無五劫の擦り切れ、海砂利水魚の…(省略)」が、欽ちゃんの頭を殴ってコブができたってことかい?
えーん。そうなんだー
お前さん聞いたかい?
うちの「寿限無寿限無五劫の擦り切れ、海砂利水魚の…(省略)」が金ちゃんの頭を殴ってコブができちまって大変だよ。
じゃあ、なにか?
うちの「寿限無寿限無五劫の擦り切れ、海砂利水魚の…(省略)」が、金ちゃんの頭を殴ってコブができたってことか?
どれ、金ちゃん。見せてみろ。
そして、寿限無の父が頭を見てみますが、コブは見当たりません。
あれ?おかしいな
金ちゃん。コブがないぞ?
あんまり名前が長いから、コブが引っ込んじゃった。
これが、寿限無という落語のあらすじです。
落ちも可愛らしく、長い名前の言い立てが小気味よく、個人的にも好きなお話です。
寿限無の長い名前の意味
では、寿限無の長い名前について、それぞれの意味を解説していきます。
寿限無
寿命や喜ばしいことが、限りないという意味。
五劫の擦り切れ(ごこうのすりきれ)
3000年に一度、天女が天下り、下界の岩に天女の衣がかすかに当たり、岩がわずかにすり減る。
その3000年に一度、岩がすり減ることを何度も繰り返し、岩がなくなることを一劫(いちこう)と呼びます。
五劫というのは、岩が5回も擦り切れるということなので、果てしないくらい、長い時間のことをさします。
海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)
海の砂利や砂、水中の魚は、数に限りがないほどあり、いくらとっても取り尽くせないほど多い。という意味。
水行末 雲来松 風来末(すいぎょうまつ・うんらいまつ・ふうらいまつ)
水の行く末、雲の行く末、風の行く末、この行き先はわからない。つまり、果てがないこと。という意味。
食う寝る処に住む処
「衣・食・住に困らずに生きていけること」を願った言葉。
やぶらこうじのぶらこうじ(やぶらこうじのやぶこうじ)
「やぶらこうじ」とは、「藪柑子(やぶこうじ)」という植物のことを指します。
やぶこうじは、非常に生命力が強く、縁起が良いとされており、幸福や長寿を象徴するものとされています 。
後半の「ぶらこうじ」は、「やぶらこうじ」と同じ意味で用いられており、リズムを取るために繰り返されていると考えられます。このように、「やぶらこうじのぶらこうじ」は、縁起が良いことを強調するための表現です。
後半部分が2つパターンがあり、「やぶらこうじのぶらこうじ」と言う落語家さんと、「やぶらこうじのやぶこうじ」と話す落語家さんがいます。
パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナ
これは、昔、中国にパイポの国というところがあり、そこにシューリンガンという王様と、グーリンダイという王妃様がいて その二人の娘にポンポコピーとポンポコナーがいた。
それがみんな長生きをした。という意味です。
ちなみにパイポという国は、架空の国のことで、存在しません。
長久命の長助
長久命長く久しい命。長く助ける。という意味。
まとめ
この記事では、古典落語の「寿限無」という演目について、あらすじや長い名前の意味などについて、解説させていただきました。
寿限無以外の演目についても、漫画で簡単に紹介してくれているこちらの本もおすすめです。
僕も、これから落語を楽しみたい方に向けて、記事を作成していますので、こちらも参考にしてみてください。